- 新築なのにひび割れがあるけど大丈夫なの?
- 築5年で基礎にひび割れができたけど地震の影響かな?
- 中古物件に「基礎のひび割れあり」と書いてあるけど買わない方がいいのかな?
- 基礎の寿命は30年とネットで見たけど建て替えしなきゃいけないかな?
基礎のひび割れはよく観察しないと見つけられません。
基礎がひび割れると鉄筋が錆ることで耐震性が低下します。
この記事では基礎にひび割れができる原因やひび割れの許容範囲をイラストで簡単に解説しています。
ひび割れの原因を知ることで過度な心配をすることなく適切な対策をとることができるので知識を身に着けましょう!
私は15年間住宅に関わり続け、現在は年間100棟の住宅診断(ホームインスペクション)を行っています。
これまで多くの基礎のひび割れ調査をしてきました。知識と経験の両面をこの記事に凝縮しています。
基礎のひび割れに悩んでいる人はぜひ最後まで読んでください。
※この記事では難しい用語をできるだけ使わずに一般の方でも概要がわかるようにイラストで解説しています。
専門的には多少の解釈の違いがありますのでご了承ください。
基礎がひび割れると鉄筋が錆ることで耐震性が低下する

鉄筋コンクリート基礎のしくみ
家の基礎は「鉄筋コンクリート」構造といい鉄筋とコンクリートを組み合わせた工法です。
【鉄筋の特徴】
・圧縮力に弱い(上から押される力)
・引張力に強い (引っ張られる力)
・錆びやすい
【コンクリートの特徴】
・圧縮力に強い
・引張力に弱い
・アルカリ性
コンクリートと鉄筋がお互いの弱いところを補うことで鉄筋コンクリートとして強い構造が造られます。
基礎の耐震性が低下するしくみ
鉄筋コンクリート基礎は鉄筋をコンクリートで保護していることで健全な状態を維持できます。
しかし経年劣化や施工不良などが原因で健全な状態を維持できなくなると劣化が進行します。

基礎の劣化を早める中性化とは?
年数をかけて水や空気がコンクリートのアルカリ性を低下させることを中性化といいます。
中性化するとコンクリートで保護されている鉄筋が錆びやすくなり劣化が進行し耐震性が低下します。
中性化の深さ | 中性化が進む時間 |
---|---|
1㎝ | 約7年 |
2㎝ | 約30年 |
3㎝ | 約65年 |

基礎のひび割れと中性化は密接な関係があるため重要な内容です。

中性化により鉄筋が錆びるのを防止するためにかぶり厚さが設けられています。
経年劣化による耐震性が低下する過程


- 中性化の深さが鉄筋まで達すると鉄筋が錆びる
- 鉄筋の錆が大きくなり膨張するとコンクリートがひび割れる
- ひび割れから水分や空気が入り中性化や錆が進行する
- 鉄筋が膨張してコンクリートが剥がれ落ちる
健全な状態の基礎であっても年数に応じて中性化は進行します。
劣化の過程からコンクリートにひび割れがあると基礎の劣化が早まることがわかります。

だから基礎のひび割れを補修することが大切なんだね!

施工不良や地盤沈下などにより基礎にひび割れが生じると中性化や鉄筋の錆は著しく早まり寿命も短くなるので注意が必要です!
基礎にひび割れが起きる原因
- 基礎の経年劣化によりコンクリートが中性化する
- 地盤沈下により基礎がひび割れる
- 基礎の締固め不足によるひび割れる
基礎の経年劣化によりコンクリートが中性化する

先に解説した通り基礎にひび割れが起きる原因として経年劣化があげられます。
鉄筋のかぶり厚さが少ないため中性化により鉄筋が錆びて劣化します。
中古住宅を調査している印象として、
昔の家はかぶり厚さという考えがなかったと思われます。
鉄筋が基礎の外側に寄りすぎているため中性化が早まっているケースをよく見かけます。
地盤沈下により基礎がひび割れる

擁壁や不同沈下などは基礎にひび割れの原因となり大きな問題になります。
不同沈下により部分的に基礎が沈下すると大きくひび割れが生じます。

地盤沈下の場合,表面的に基礎を補修しても根本的な解決になりません。
きちんと地盤沈下の原因を解決しないと再度ひび割れが生じる恐れがあるため注意してください。
施工不良による基礎のひび割れ

生コンクリート打設時の締め固め不足は最も一般的にみられる施工不良です。
基礎を造る時は生コンクリートをミキサー車から流し込みます。
生コンクリートは水や砂,石などが混ぜられているため均一になるように締め固める必要があります。
しかし専用のバイブレーションでの締め固めが不足していると均一にコンクリートが流されずすき間が生じます。
基礎にすき間ができると鉄筋までのかぶり厚さが短くなり劣化が早まるのです。
建築基準法違反の施工不良
建築基準法施行令には基礎に関する規定があります。
これらは法律で規定されているにも関わらず守られていないケースが非常に多い印象です。
- 建築基準法施行令 第79条 鉄筋のかぶり厚さ
- 建築基準法施行令 第75条 コンクリートの養生
鉄筋のかぶり厚さ

新築の配筋検査の際に特に多い施工不良が土に接する部分で6㎝以上のかぶり厚さが確保されていないケースです。
先に解説したとおりかぶり厚さは基礎の耐久性に影響を与える重要な項目のため必ず確認が必要です。
【建築基準法施行令 第79条 鉄筋のかぶり厚さ】
・鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さは耐力壁以外の壁又は床にあつては2㎝以上
・耐力壁、柱又ははりにあつては3㎝以上
・直接土に接する壁、柱、床若しくははり又は布基礎の立上り部分にあつては4㎝以上
・基礎(布基礎の立上り部分を除く。)にあつては捨コンクリートの部分を除いて6㎝以上としなければならない。
コンクリートの養生

コンクリートの養生についても法律で規定されています。
特に外気温が低くなる冬季やコンクリートの乾燥が早まる夏季には注意が必要です。
外気温がマイナスになる時期にコンクリートを打設すると固まる際にコンクリートが凍結して全体的に亀甲状のひび割れが生じることがあります。
外気温が高い夏季ではコンクリートの乾燥が早くなりすぎるためコンクリートが収縮して細かいひび割れが生じることがあります。
【建築基準法施工令 第75条 コンクリートの養生】
コンクリート打込み中及び打込み後5日間はコンクリートの温度が2度を下らないようにし
乾燥,震動等によつてコンクリートの凝結及び硬化が妨げられないように養生しなければならない。
これらは建築士である工事監理者が設計図書と現場の施工が一致しているかを確認することが建築士法で規定されています。
しかし工事監理者はほとんど現場に出ないため職人さん任せになっているのが現状です。
新築の基礎ひび割れ幅の許容範囲
ひび割れ幅の規定
新築の基礎ひび割れについては
「国土交通省告示第308号 住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」に規定されています。
ひび割れの幅 | 構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性 |
---|---|
0.3mm未満のひび割れ | 低い |
0.3mm〜0.5mm以上のひび割れ | 一定程度存する |
0.5mm以上のひび割れ | 高い |
「構造耐力上主要な部分に瑕疵(かし)が存する可能性」とよくわからない書き方がされています。

瑕疵とは雨漏りやひび割れなどの構造に関わる不具合のことです
ざっくり言うとこのひび割れ幅はあくまでも目安に過ぎないという意味です。
実際に瑕疵に当たるかは瑕疵保険会社が決めることなのでいくら建築士でも断定はできません。
その他の規定
ひび割れ以外にも下表のような規定があります。
欠損 | 構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性 |
---|---|
構造材における深さ20mm以上の欠損 | 高い |
さび汁を伴う欠損 | 高い |
鉄筋が露出する欠損 | 高い |
以上のように新築住宅の基礎のひび割れなどはトラブルに発展する場合があるので国土交通省により目安が決められています。

この目安のことを一般的に新築の許容範囲と言われています。
そのため0.5mm以上のひび割れがあるから欠陥住宅だ!とは言い切れないのです。
中古住宅の基礎ひび割れ幅の許容範囲
中古住宅の基礎ひび割れについては
「国土交通省告示第82号 既存住宅状況調査方法基準」に規定されています。
中古住宅の基礎にはひび割れ以外にも様々な規定があります。
- 幅0.5mm以上のひび割れ
- 深さ20mm以上の欠損
- コンクリートの著しい劣化(広範囲及ぶひび割れやジャンカを含む)
- 錆汁を伴うひび割れまたは欠損(白華を含む)
- 鉄筋の露出
- 鉄筋の本数,間隔
幅0.5mm以上のひび割れ

基礎のひび割れ幅はクラックスケールという専用の定規を使って計測します。

0.5mmならシャーペンの芯1本分と同じだね!
基礎にライトを当てながら調査するとひび割れを見つけやすいです。
昔の家は基礎に床下換気口があります。
換気口付近は特にひび割れが生じやすいため注意して観察します。
深さ20mm以上の欠損

ひび割れの深さを計測するにはテーパーゲージやピアノ線を使用します。
しかしひび割れは内部でギザギザになっているため参考程度にしかなりません。

基礎の厚みは150mm程度なので深さ20mmはかなり大きい欠損です。
コンクリートの著しい劣化(広範囲及ぶひび割れやジャンカを含む)
ひび割れ幅0.5mm以上や深さ20mm以上の欠損がなくても広範囲におけるひび割れや欠損は劣化事象に該当します。

ジャンカとは生コンの打設時の締め固め不足により基礎にすき間ができることです。

すき間があると鉄筋のかぶり厚さが不足するから劣化が進行しそうだね!
錆汁を伴うひび割れまたは欠損(白華を含む)
基礎に錆汁があると鉄筋まで水分が到達して錆びている証拠です。
ひび割れから錆汁が垂れている場合は早めの補修が必要です。

白華現象(エフロレッセンス)とは基礎の表面が白色の結晶状で汚れることをいいます。

基礎が白くなっていたらコンクリート内に水が入っている証拠です!
白色の結晶状はコンクリートから流出した成分のため劣化が進行している証拠です。
白華が進行するとツララのように垂れ下がることがあります。
鉄筋の露出

今まで解説してきたとおり鉄筋はコンクリートに保護されていることにより健全な状態を維持できます。
鉄筋の錆が進行するとコンクリートが剥がれ落ち鉄筋が露出します。
ここまで劣化が進行すると耐久性に著しい影響を及ぼすため早急な補修が必要です。
鉄筋の本数,間隔

最後に鉄筋の本数と間隔についてです。
この内容は劣化事象ではありませんが鉄筋が入っていない無筋コンクリート基礎となります。
また、鉄筋の間隔が広いと基礎の耐力が低いと判断されています。
出来上がっている基礎の鉄筋を調べるには「鉄筋探査機」が必要です。
超音波の跳ね返りにより鉄筋の位置を調べることができます。

私が中古住宅を調査する時は必ず鉄筋探査機で調査します。
必要な本数と間隔は以下の通りです。

X方向 基礎立上がりの横筋 | 300mmピッチ以下 |
Y方向 基礎立上がりの横筋 | 300mmピッチ以下 |
ベタ基礎の場合 地盤面のスラブ筋 | 300mmピッチ以下 |
ひび割れの方向について
基礎のひび割れは方向によって原因が異なります。
ひび割れ方向は原因の推測に重要な項目です。
縦向きのひび割れ

最も多いひび割れは縦向きです。
縦向きのひび割れの原因は以下のとおりです。
ひび割れ幅 | 原因 |
---|---|
0.3mm未満 | コンクリートの乾燥収縮によるもの |
1mm以上の著しいひび割れ | 基礎の不同沈下によるもの |
幅0.3mm未満の縦向きのひび割れであれば新築時の乾燥収縮である可能性があります。
適切な補修をすれば大きな問題にはなりません。

幅1mm以上のひび割れを見つけたら不同沈下の調査をする必要があります。
著しいひび割れは不同沈下の可能性もあるため表面的な補修だけ行っても効果的ではありません。
必ず根本的な原因を調査しましょう。
横向きのひび割れ

基礎の横(水平)方向のひび割れは生コン打設時に締め固めが不足している可能性があります。
基礎の中には格子状に鉄筋が組まれているため横の鉄筋の下にはコンクリートが充填しにくい状態です。
ひび割れ幅小さければ適切な補修を行えば大きな問題にはならないため過度な心配はいりません。
斜め方向のひび割れ

斜め方向のひび割れが生じている場合は注意が必要です。
地震により大きな力が掛かった可能性が高いからです。
斜め方向のひび割れは1階部分を鉄筋コンクリートで造っているような高さが高い建物に見られる劣化事象です。
窓などの開口部付近は特にひび割れやすいのでよく観察しましょう。
一般的な住宅のような低い基礎ではあまりみられない劣化事象です。
亀甲状のひび割れ

亀甲状で細かいひび割れが基礎全体に生じている場合は打設初期の養生不足が原因です。
気温が高い夏に散水養生が不足していたことが原因で急激にコンクリートが乾燥している証拠です。
気温がマイナスになるような冬季にコンクリートが凍結したことも原因と思われます。

どちらも施工不良が原因と思われるため生コンを打設した気温や状況を確認しましょう。
構造に影響のないひび割れ
ひび割れといっても一概に構造に影響があるわけではありません。
過度に心配する前にどの箇所がひび割れているのか把握しましょう。
- 化粧モルタルのひび割れ
- 防湿コンクリートのひび割れ
- 土間コンクリートのひび割れ
化粧モルタルのひび割れ

化粧モルタルとは基礎コンクリートの上から塗る「お化粧」のことです。
基礎コンクリートの表面を一回で綺麗に仕上げるのは難しいため後からお化粧をする方法を化粧モルタルといいます。
化粧モルタルは5mm程度しか塗らないので乾燥により割れることがあります。
そのため化粧モルタルのみのひび割れであれば構造には影響しません。

しかし必ず床下から基礎の裏側がひび割れていないか確認してください!
”化粧モルタルのひび割れ位置”と”床下のひび割れ位置”が一致しているかを確認してください。
もし同じ位置にひび割れがあれば基礎のひび割れは貫通していると思われます。
「化粧モルタルしか割れていませんよ」という言葉は鵜呑みにしてはいけません。

外側だけじゃなくて床下の確認は必須だね!!
防湿コンクリートのひび割れ

基礎はべた基礎と布基礎に分けられます。
布基礎であれば地盤面は構造躯体ではないためひび割れていても大きな問題はありません。
しかし著しいひび割れの場合は地盤沈下などの疑いがあります。
0.5mm以上のひび割れがあれば家の傾斜測定などの地盤沈下の調査を行うのが良いでしょう。

布基礎とべた基礎は目視だけでは判断が難しいため必ず建築士による調査をお勧めします。
土間コンクリートのひび割れ
駐車場や家の周りのコンクリート部分は家の構造躯体ではありません。
多少のひび割れは許容しても良いでしょう。
防湿コンクリートと同じく著しいひび割れが生じている場合は地盤沈下の可能性があるため詳細な調査をお勧めします。
基礎の寿命は30年と言われる根拠について

基礎の寿命は30年とネットで見たけど建て替えが必要かな?

その根拠について私なりの推測を解説します。
- 短期(おおよそ30年) の耐久設計基準強度18N/㎟
- 中性化は深さ2㎝まで約30年
耐久設計基準強度の短期が30年だから
想定される使用年数 | 耐久設計基準強度N/㎟ |
---|---|
短期(おおよそ30年) | 18 |
標準(おおよそ65年) | 24 |
長期(おおよそ100年) | 30 |
超長期(おおよそ200年) | 36 |
耐久性設計基準強度とは建物の想定される使用年数によって決められたコンクリートの圧縮強度です。
この表では想定される使用年数の一番短い期間が30年とされています。
おそらくこの考え方から基礎の寿命は30年と言われたのではないかと思います。
中性化は深さ2㎝まで約30年かかるから
【中性化が進む時間】
・深さ1㎝まで約7年
・深さ2㎝まで約30年
・深さ3㎝まで約65年
参考資料;やさしい建築一般構造
上記の表から中性化が2㎝進むまで約30年かかります。
中古住宅を調査すると鉄筋のかぶり厚さが2㎝程度のことはよくあります。
この考えから2㎝の深さが中性化するまで30年と言われたのではないかと思います。
ひび割れがあると基礎の寿命は短くなる

注意しなければならない点は上記の2つの根拠はあくまでも健全な状態の基礎の場合です。
ひび割れがあれば寿命は短くなります。
上記の表から深さ1㎝の中性化の早さは7年とされています。
単純計算をするとひび割れにより鉄筋のかぶり厚さが1㎝しかないと7年で中性化することになります。

以上のことからひび割れ補修は必ず行う必要があることになります。
ひび割れの調査方法
セルフチェック方法
ひび割れの調査は外部であればセルフチェックが可能です。
私の感覚ですが新築であっても8割程度の確率でひび割れを見つけます。
ぜひご自身でセルフチェックしてみてください。
- 新築の引渡し前
- 中古住宅の契約前
新築でも中古住宅でも引渡しの後では補修対象にならない可能性があります。
手遅れにならないタイミングでセルフチェックを行いましょう。
セルフチェック方法は簡単です。

ひび割れと0.5mmのシャーペンの芯を比べるだけです

・新築であればひび割れの幅が0.3mm未満
・中古住宅であればひび割れの幅が0.5mm未満
これだけ覚えておきましょう。
上記のひび割れ幅に該当すれば売主に伝え、必要であれば住宅診断士などに依頼することをお勧めします。

スマホで写真を撮れば日付と時間も記録されるから売主に伝える時に便利だね!
ひび割れ調査箇所

ここからは住宅診断士の私がひび割れ調査を行う箇所をご紹介します!
- 土間コンクリート
- 外部の基礎
- 内部の基礎(床下)
- 間仕切り下部の基礎(床下)
- 地盤面の基礎(床下)
ご覧の通り,ひび割れ調査のほとんどが床下空間です。
例として30坪ほどの平均的な戸建て住宅の図面をご覧ください。

基礎というと外周部の見える箇所のことを思い浮かべますが見えている箇所はほんの一部です。

外部だけ見れば良いと思っていたけど床下にも基礎がたくさんあるね💦
重要なのは床下の通常目視できない箇所です。
しかし床下は真っ暗で非常に狭いため一般の方は入ることはできません。
建築会社の方に床下に入ってもらう時は必ず写真を撮ってもらいましょう。
新築であれば工事監理者がひび割れがないかを確認しなければいけません。
しかし床下に入る工事監理者は見たことがありません。
新築の引渡し前ですら床下の確認を行わないので住宅診断士が竣工検査を行っています。
本来,新築の基礎にひび割れがないかを確認するのは工事監理者の仕事であり住宅診断士の仕事ではありません。
中古住宅の場合は住宅診断士に依頼しましょう。

住宅診断士は建築の中でも調査に特化した専門職です。
住宅診断士は一般の建築業務では経験できない数の建物調査を行っているため知識に加えて圧倒的な経験があります。
不動産屋さんは不動産の専門家ですが建築の専門家ではありません。
そのため建物の調査を依頼するのは住宅診断士をお勧めします。
ひび割れの補修方法と費用
ひび割れの補修方法は一般の方が指定するものではありません。
ひび割れの特徴や原因を的確に判断して専門家が補修方法を選定します。
そのためひび割れの補修方法と費用は参考程度に簡単に解説します。
工事会社や家の状況により異なりますのであくまでも目安としてください。
- シール工法
- フィラー工法
- ビックス工法(低圧注入工法)
- Uカット・Vカットシール材充填工法
- アラミド繊維・エポキシ樹脂ハイブリッド工法
- 基礎の増し打ち補強
シール工法

もっとも簡単な補修方法です。
ひび割れにシール材を充填するだけなので一般の方でも応急処置的な意味合いであれば補修することも可能です。
シール材はホームセンターに1本1000円以内で売っています。
フィラー工法

ひび割れ幅0.3mm未満の細かいひび割れの補修方法です。
0.3mm未満のひび割れは非常に小さいため上から補修材を塗っても奥まで充填できません。
フィラー工法は毛細管現象により刷毛などを使用し細かいひび割れの中に補修材を浸透させることができます。
費用は1箇所あたり数千円程度のため予算内で補修できるでしょう。
ビックス工法(低圧注入工法)

ひび割れ幅0.5mm〜1.0mmの中程度のひび割れの補修方法です。
専用の注射器を使用してひび割れに補修材を充填する方法です。
ゆっくりと補修材を注入するためひび割れの奥まで充填できる特徴があります。
費用は1箇所1万円程度のため補修数が多ければ費用も高くなるでしょう。
Uカット・Vカットシール材充填工法

ひび割れ幅1mm以上の大きいひび割れの補修方法です。
シール工法は表面的な補修ですが、表面をU字・V字にカットしてから補修することでしっかりと補修材が充填できる特徴があります。
シール材は1本1000円以内で購入できますがU字・V字にカットする作業手間がかかります。
費用は1箇所1万円程度が一般的です。
アラミド繊維・エポキシ樹脂ハイブリッド工法

無筋コンクリート基礎の補強や著しい欠損がある基礎の補修方法です。
アラミド繊維は引張力に強い特徴があるため無筋コンクリートの補強としても使われます。
エポキシ樹脂と合わせて使うことでさらに補修効果が期待できます。
費用は1mで2万円程度と高額なため補修には十分な検討が必要です。
※注意点 アラミド繊維は基礎の両側に張ることで本来の性能を発揮できます。
外周部のみの施工では効果が限定的になるため、補修箇所の判断には十分な検討が必要です。
出典:一般社団法人 住宅基礎コンクリート保存技術普及協会
基礎の増し打ち補強

無筋コンクリートを耐震補強する場合に基礎の内側に新たに基礎を抱き合わせる工法です。
基礎の増し打ち補強をするには床を解体する必要があるため大規模なリフォームが前提となります。
費用も数百万円と高額になるため家全体で耐震補強を行う際に検討が必要です。
ひび割れを補修しても解決はしない
基礎のひび割れを補修しただけでは根本的な解決はしません。

最も重要なのはなぜひび割れが発生したのか?を把握することです
ひび割れの原因を追究せずに表面的な補修を行っても根本的な解決にはなりません。
軽微なひび割れに対して過剰な補修をすることにもつながります。
基礎に構造的なひび割れが生じている場合、その他の部分でも不具合が見つかることが多々あります。
そのため著しいひび割れが見つかったらその上部の壁や傾斜測定を行うことは必須です。

ひび割れの特徴から原因を推察することが重要なんだね!
必ず経過観察を行う

基礎のひび割れを行ったら必ず経過観察を行います。
地盤沈下などが原因でひび割れが生じている場合はひび割れが進行する可能性があります。
新築の引渡し検査で床下調査を行った時の事例です。
基礎の打設日から引渡し日まで数カ月しかありません。
おそらく初期の乾燥収縮によりひび割れていたため補修がされていました。
しかしすでに補修跡の上からひび割れが生じていたことがあります。
ひび割れが進行しているかは経過観察をするしか確認する方法はありません。
補修したからといって安心せず必ず経過観察を行いましょう。
ひび割れ調査の依頼先
基礎のひび割れ調査はどこに頼むのが良いでしょうか。
一般的にはひび割れの補修会社が思いつきます。
補修会社は補修工事で利益を出すため無料点検を行っています。
そのため無料で点検したい方は連絡してみても良いと思います。
しかしこれまで解説してきた通り基礎のひび割れに最も重要なのはひび割れの原因を正確に把握することです。
ひび割れの原因はその他の箇所に不具合が生じていないか家全体を調査することでようやく推測することができます。
基礎のひび割れを表面的に補修するだけで解決した気にはならないように注意しましょう。
住宅診断(ホームインスペクション)という選択肢もある

住宅診断とは家をまるごと調査することで建物の不具合を総合的に調査する専門業務です。
そのため基礎のひび割れはもちろんのこと家の傾斜や地盤沈下、雨漏りなど目視や機械を使ってできる限り調査を行います。
住宅診断は建築士が行う調査専門の職業です。
まだまだ一般的に認知はされていませんが選択肢の一つとして知っておくことに損はないでしょう。

知識があると失敗する可能性を低くできるね!
ひび割れを発見したら保険を確認しよう
基礎のひび割れは家の条件により保険が適用できる場合があります。
- 新築の瑕疵保険
- 既存住宅売買瑕疵保険
- 火災保険・地震保険
- フラット35
新築の瑕疵保険
新築住宅を建てる場合は建築会社は必ず瑕疵保険や供託などに加入する必要があります。
瑕疵保険とは新築から10年以内に万が一、構造的な不具合や雨漏りなどが生じた場合に建築会社に支払われる保険です。
そのため瑕疵保険の加入者は施主ではなく建築会社になります。
新築から10年以内の住宅は建築会社に早めに確認しましょう。
住宅品質確保促進法(品確法)事業者は、新築住宅の構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分の瑕疵(かし)について、10年間補修する義務を負っています。 このひび割れから雨水が浸水し、その結果鉄筋が腐食するなど、基礎の構造安全性・耐久性を劣化させた場合は、10年間補修をする義務を負う可能性があります。
解説動画(YouTube):一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会
既存住宅売買瑕疵保険
既存住宅売買瑕疵保険とは中古住宅を購入する際に一定の年数の間に構造的な不具合や雨漏りが発生した時に支払われる保険です。
この保険は新築と違い中古住宅の購入者が加入します。
中古住宅を購入した際に加入した保険を早めに確認しましょう。
既存住宅売買瑕疵保険に加入するには基礎のひび割れなどの劣化事象を補修する必要があるため保険会社からの検査を受けなければなりません。
解説動画(YouTube):一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会
火災保険・地震保険
住宅を購入する際にはほとんどの方が火災保険と地震保険に加入しているはずです。
火災保険では基礎にひび割れが生じた原因によっては火災保険の対象となることがあります。
・温度低下による凍結によるひび割れ
・水害による地盤沈下が原因のひび割れ
などの地震以外の自然災害による損害などの場合は火災保険が適用されることがあるので保険会社に確認しましょう。
地震保険はあくまでも地震をはじめとした災害が原因である損害を補償するものです。
・地盤沈下
・施工不良
・経年劣化
などが原因のひび割れは保険の適用にはなりません。
そのため基礎のひび割れが何が原因で発生したのかを調査する必要があります。
フラット35
フラット35は保険ではなく住宅ローン制度です。
一般的には新築の住宅ローンを低金利で借りられることで知られています。

実は中古住宅でもフラット35は利用できるんです。
しかし中古住宅の場合「健全な状態の住宅」である必要があるため基礎のひび割れなどの劣化があると補修する必要があります。
中古住宅のフラット35の利用を検討している方は確認しましょう。
注意
これらの保険や制度を利用するには加入している保険などの種類や会社により異なりますので自分が加入している保険会社に連絡してください。
ひび割れを発見したらすること
- 自分でひび割れを測ってみる
- 保険に加入しているか確認する
- 建築会社に連絡する
- 建築士によりひび割れの原因を推測する
- ひび割れを補修する
- ひび割れの経過観察をする
ひび割れを発見したら欠陥住宅だ!と決めつけずに原因をしっかりと把握しましょう。
その上で適切な補修をして経過観察を行えば大きな問題になることは少ないでしょう。
基礎のひび割れは複合的な要素が原因の可能性もあるため表面的な補修で満足しないように注意してください。

住宅診断士は年間100棟の調査を行う調査に特化した建築士です。
基礎は構造に関わる重要な部分のため早めに相談して対策をしましょう!
”住まいと家族の健康学校”では
【無料の相談メール】を受け付けています。
家の傾きについて不安に感じていることや専門的でわからない方はぜひご相談ください。
この記事の参考文献
- 小規模建築物基礎設計指針 日本建築学会
- 木造住宅工事仕様書 住宅金融支援機構
- 適合証明技術者 実務手引き 一般社団法人日本建築士事務所協会連合会
- 既存住宅状況調査技術者 講習テキスト一般社団法人日本建築士事務所協会連合会
- やさしい建築一般構造 学芸出版社