【C値(シーち)とは?】住宅の気密性能を測る唯一の指標を、専門学校講師が世界一分かりやすく解説

専門家が住宅の気密性能を示す「C値」の重要性を解説しているアイキャッチ画像。

🌀最新の換気システムを入れたのに、なぜか空気がよどんでいる。
🪟高性能な断熱材が入っているはずなのに、どこからか隙間風を感じる。
📍その不快な現象の根本原因は、家の隙間の量、すなわち気密性能にあるのかもしれません。

関谷 春樹
関谷 春樹

はじめまして。元棟梁で建築専門学校講師の関谷春樹です。 今回は、家の快適さと健康を左右する、最重要でありながら多くの人が知らない気密性能と、それを測る唯一の指標C値についてお話しします。

この記事の結論を先にお伝えします。

家の断熱性能や換気性能は、C値という気密性能を示す数値に裏付けられて初めて、その効果を100%発揮します。

家の気密性能、あなたの家はどっち?

🙆‍♀️ 良い状態(高気密な家)
C値が低い(1.0以下が目安)。計画通りの換気が実現し、断熱材の性能を最大限に引き出す。冷暖房の効きも良く、光熱費を抑えられる。
🙅‍♂️ 悪い状態(低気密な家)
C値が高い。隙間風で熱が逃げ、換気扇も機能不全に。断熱材は穴の開いたダウンジャケットと同じで、本来の性能を発揮できない。

この記事を最後まで読めば、あなたはC値とは何かを誰にでも説明できるようになります。
そして、住宅会社の営業マンが内心で嫌がる、家の本質を見抜く質問ができるようになります。

第1章:なぜ気密が全ての土台なのか

住宅の気密性能(C値)を魔法瓶に例えたイラスト。「C値=施工品質」であることを示し、隙間のない家と隙間だらけの家(ストローが刺さった魔法瓶)の違いを視覚的に表現。

魔法瓶とストローの例え話

📍例えば…
家の断熱性能を、熱いお茶をいれた魔法瓶だと考えてみてください。
魔法瓶そのものの性能が断熱材です。 しかし、その魔法瓶のフタに、もしストローが何本も刺さっていたらどうなるでしょうか。中の熱は、そのストローを通じてどんどん逃げていきます。
この家全体に空いている無数の隙間、つまりストローの合計の太さを示すのがC値なのです。

断熱と換気は、気密という土台の上でしか機能しない

どんなに分厚いダウンジャケットを着ていても、前のファスナーが開いていれば寒いままです。
家の断熱材も同じで、家に隙間があれば、そこから熱は出入りし、断熱性能は台無しになります。

換気扇の役割は、給気口から入った新鮮な空気が部屋全体を巡り、汚れた空気を排出することです。
しかし、気密性が低い(隙間が多い)家では、換気扇がすぐ近くの窓の隙間などから楽に空気を吸い込み、そのまま排出してしまいます。
この「空気のつまみ食い」のような現象がショートサーキットです。結果として、部屋の奥の空気は全く動かず、換気されていないのと同じ状態に陥ります。

「換気」について
✅より詳しい内容は下記の記事をチェック✅

第2章:C値が悪い家で失う、3つのもの

C値が高い家で失う「お金」「健康」「家の寿命」の3大リスクを示した図解。光熱費の浪費、熱中症やCO2濃度の上昇、壁内結露による家の劣化を説明している。

失うもの① お金

💸C値が悪い家は、穴の開いたバケツで水を運ぶのと同じです。
エアコンで暖めたり冷やしたりした空気が、絶えず隙間から漏れ出ていきます。あなたは快適な室温のためではなく、無駄に捨てられる熱のために、毎月高い光熱費という罰金を支払い続けることになります。

失うもの② 健康

🤒C値が悪い家では、計画換気が正常に機能しません。その結果、室内の二酸化炭素(CO2)濃度が上昇し、ご家族の集中力低下や頭痛を引き起こす原因となります。
さらに夏場は、隙間から絶えず熱が侵入するため夜間も室温が下がらず、睡眠中の熱中症といった、より深刻な健康リスクに繋がるのです。

「CO2」について
✅より詳しい内容は下記の記事をチェック✅

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失うもの③ 家の寿命

🏚️壁内結露がもたらす最悪の事態は、家の構造体を腐らせることです。 柱や土台といった、家を支える最も重要な木材が、湿気によって静かに、しかし確実に劣化していきます。C値の悪さは、目に見えないところで家の寿命そのものを縮めていくのです。

第3章:業界の罠 なぜ、住宅会社はC値測定を嫌がるのか

C値に関して住宅会社が隠したい3つの不都合な真実をまとめた画像。「腕の証明」「経年劣化の罠」「測定しない自由」という3つのポイントを解説している。

罠①:「腕のいい工務店はどこ?」への、唯一の答え

施主様から「どうやって腕のいい工務店を見つければいいか」と頻繁に質問されます。私が必ず答えるのは「C値1.0以下を安定して出せる工務店を探してください」ということです。

C値を下げるには、現場での非常に高い施工精度が求められます。断熱材の施工、テープ処理、部材の取り合いなど、無数の工程で丁寧な仕事ができて、初めて達成できる数値です。

✅つまりC値は、大工や職人の「腕」を客観的な数値で測れる、ほぼ唯一の指標なのです。これだけの精度で気密処理ができる工務店は、他の工事においても品質が高いと、まず信頼して良いでしょう。

罠②:測定時だけの、長持ちしない気密処理

⚠️注意すべきは、測定時だけ数値が良くても意味がない、ということです。
気密処理を気密テープだけに頼っていると、テープは経年劣化で剥がれ、数年後には気密性能が低下する可能性があります。

本当に腕のいい工務店は、テープの上から木材で押さえるなど、数十年先も性能が維持される施工を行います。見かけ上の気密性能だけでなく、その持続性まで考えているかどうかが、プロの仕事です。

罠③:測定しない限り、ごまかしが効くという現実

📍C値は、現場の施工品質をごまかせない、不都合な通知表です。

住宅会社がC値測定を標準で行わない最大の理由は、もし悪い数値が出た場合、その補修に大きな手間とコストがかかるからに他なりません。 そして、施主が測定を求めない限り、その家の本当の気密性能は、誰にも知られることなく家が完成してしまうのです。

第4章:私が気密測定で見てきた、衝撃の現場

ホームインスペクターが見た気密測定の3つの実録を解説した画像。「見えない空気の通り道」「測定しないという罠」「C値0.03の世界」という現場の事例を紹介している。

実録①:天井に断熱材はあるのに、間仕切り壁が冷たい家の謎

天井裏で、間仕切り壁の上部に気流止めが施工されておらず、隙間から壁の中に冷気が侵入している施工不良の現場写真。

「天井には断熱材が入っていると聞いていたのに、冬になると部屋の中の壁まで冷たいんです」というご相談がありました。

✅原因は、天井の断熱層ではなく、部屋と部屋を仕切る「間仕切り壁」にありました。天井裏では、この間仕切り壁の上部ががら空きになっており、「気流止め」という処理がされていなかったのです。
その結果、天井裏の冷たい空気が、家の内部の間仕切り壁の中を自由に通り抜け、壁全体を冷やしていました。

実録②:気密測定をしない「自称」高気密住宅の罠

「うちは気密処理をしっかりやっていますから大丈夫です🙋‍♂️」

そう言って、気密測定をせずに引き渡す会社は、残念ながら存在します。 施主が建築の知識がないことを良いことに、「やっている」と言うだけで、その結果を数値で証明しないのです。
⚠️気密性能は、実際に測定しなければ誰にも分かりません。
「測定しない」という選択は、施主に対する作り手としての誠実さに欠けていると、私は考えます。

実録③:大工時代に達成したC値0.03㎠/㎡の世界

✊どこまで気密性能を高めるべきかは、常に議論になるテーマです。
しかし、施工者として、どこまで性能を追求できるかに挑戦した経験もあります。

私が大工時代に手掛けた家では、徹底した気密処理を行い、C値0.03㎠/㎡という数値を達成しました。これはもはや「隙間がない」と言えるレベルです。施工精度を高めれば、ここまでの性能が出せるという証明であり、私の仕事の原点でもあります。

結論:C値測定は、施工品質を証明する唯一の手段

C値が施工品質を客観的に証明する唯一の指標であることを示す結論画像。良い気密性能の家を手に入れて喜ぶ人々のイラスト。

家の性能を語る上で、断熱材の種類や窓のスペックも確かに重要です。しかし、それらの性能をカタログ通りに発揮させる大前提が、高い気密性能、すなわち低いC値です。

🌻C値測定は、あなたの家が丁寧な仕事で建てられたか、その施工品質を客観的に証明する唯一の手段です。家の本当の価値は、C値が知っています。

関谷 春樹
関谷 春樹

私は建築の仕事を15年間してきた専門家として、家の不具合の原因を見つけ、みなさんが抱えている不安やストレスを、少しでも「安心」に変えるお手伝いができると信じています🌻

🍀住まいと家族の健康学校🍀では住宅に関する悩み相談を受けています。 住まいの不安は大きなストレスとなるためプロの専門家に話を聞いてもらいましょう。

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ホームインスペクションについて
✅より詳しい内容は下記の記事をチェック✅

「C値に関する」よくある質問(FAQ)

「FAQ よくある質問」というタイトルのヘッダー画像。家とハートのイラストの下に、満足そうな表情の人々が描かれている。

Q. C値は、どのくらいの数値を目指すべきですか?

A.C値1.0㎠/㎡を最低ラインとしてください。
まず大前提として、一般的な住宅で使われる第三種換気システムが適切に機能するためには、C値1.0㎠/㎡以下が必要不可欠です。これを下回らないと、そもそも計画的な換気ができません。その上で、C値は良ければ良いほど快適になりますが、0.5㎠/㎡を下回ってくると、さらなる性能向上にかかる費用に対して、得られる効果が小さくなる「費用対効果」の問題が出てきます。ですから、まずはC値1.0㎠/㎡を最低ラインとし、予算や目的に応じて0.5㎠/㎡に近づけていくのが、賢い目標設定と言えるでしょう。

Q. 気密測定をしていない工務店でも、気密施工はできますか?

A.理論上は可能ですが、良い結果(低いC値)を出すのは極めて難しいと考えるべきです。
気密施工は、料理のレシピと似ています。レシピ(施工マニュアル)通りに作業しても、火加減や塩加減といった「経験と勘」がなければ、美味しい料理(低いC値)は作れません。 気密測定は、その「塩加減」が正しかったかを確認する唯一の手段です。測定経験のない工務店は、いわば「味見をせずに料理を出す」ようなもの。本当に腕の良い工務店は、必ず測定という「味見」を行っています。

Q. 建てた後から、C値を改善することはできますか?

A.不可能ではありませんが、壁や天井を剥がす大掛かりな工事が必要になる場合が多く、費用も高額になります。新築時に、適切なタイミングで測定を行うことが最も重要です。

Q. C値が高いと息苦しくなりませんか?

A.それは明らかな間違いですむしろ逆で、C値が高い(隙間だらけな)家ほど、計画的な換気ができず空気はよどみます。
C値を高めて初めて、計算通りの換気が可能になり、家全体の空気をきれいに保つことができるのです。 少し昔の日本の家づくりを思い出してください。田舎のおばあちゃんの家は、軒が深く、風が通り抜け、夏は涼しい印象がありませんか?これは夏の暑さ対策に重きを置いた考え方です。その代わり、冬は厚着をしてこたつで暖を取るのが当たり前でした。 しかし、日本の気候は変化し、これからは今よりも格段に気温が高くなることは明らかです。これからの家づくりは、夏の暑さにも冬の寒さにも対応する必要があります。そのためにも、高い気密性能は、断熱や換気と必ずセットで考えなければならないのです。

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この記事を書いた人
関谷 春樹

関谷 春樹(せきや はるき)
15年の大工・棟梁経験を活かし、現在はホームインスペクター(住宅診断士)として年間100棟の住宅を診断。その傍ら、建築専門学校で未来の建築士たちに「構造力学」や「環境工学」を教える講師も務める。
コンセプトは「見えない不安を、見える安心に」。 高価な設備やスペック競争よりも、現場での「適切な施工」と「本質的な知識」こそが、家の価値と家族の健康を守ると信じ、情報発信を行っている。
【主な保有資格】
・二級建築士
・JSHI公認ホームインスペクター
・一級建築大工技能士
・カビ・ダニ測定士
・シックハウス診断士

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