中古住宅を購入する時の地盤、擁壁、基礎の調べ方

中古住宅購入時に見落としがちな地盤、擁壁(ようへき)、基礎の重大な問題をチェックする方法を解説する記事のアイキャッチ画像。「その「掘り出し物」地面の下に爆弾が?」という、潜在的なリスクに対する強い警告文が書かれています。
目次

その物件、本当に「掘り出し物」ですか?家の価値の9割は、地面の下に隠れているという事実。

理想的な間取り、美しくリフォームされた内装、日当たりの良いリビング。
いくつかの中古住宅を内覧する中で、ようやく「これだ」と思える物件に出会えた時の高揚感は、何物にも代えがたいものです☘️

しかし、その気持ちが高まる一方で、心のどこかで冷静な声が聞こえてきませんか?

⚠️「待てよ。キッチンやお風呂は新しくできても、この家が建っている『地面』や、
家を支える『基礎』は大丈夫なのか?」

📍もし、そう感じたのであれば、それはあなたの判断が極めて正しい証拠です。その一瞬の冷静な不安こそが、これから数十年続くあなたの家族の安全と、大切な資産を守るための最大の武器になります。

棟梁は、まず地面を読み、基礎を据えることから始める。

関谷 春樹
関谷 春樹

こんにちは😊元・棟梁の関谷春樹です。私は職人として多くの家づくりに携わった後、自らの手で築30年になる妻の実家をリフォームしました🌻

棟梁として現場に立っていた時代、親方から最初に叩き込まれたのは
「家は地面の上に“載っている”に過ぎない」という厳しい事実でした。
どんなに立派で美しい木材を組み上げても、足元である地盤や基礎が揺らげば、家はただの木の塊になってしまいます。

その教えは、住宅診断士となった今も私の原点です。

📍私が診断でお伺いした際、家の中に入る前に、まず建物の周囲をゆっくりと3周するのはそのためです。地面の僅かな起伏、擁壁の小さなひび割れ、基礎に残された過去の補修跡。それらの声なき声に耳を傾けることから、私の診断は始まります。

結論:地盤・擁壁・基礎は「ギャンブル」ではありません。「手順」に沿って正しく調査すれば、リスクは限りなくゼロにできます。

家の足元に潜むリスクは、確かに目には見えません。 だからといって、「運任せ」にする必要は全くありません。あるいは、不動産会社の「大丈夫ですよ」という言葉を鵜呑みにするのは、あまりにも危険です。

📍地盤・擁壁・基礎の状態は、科学的な手順に沿って正しく調査すれば、そのリスクを事前に把握し、限りなくゼロに近づけることが可能です。

✅この記事では、あなた自身でできる事前調査から、専門家による最終診断まで、「3段階の調査手順」を具体的にお伝えします。この記事を読み終える頃には、「見えない不安」は「見える安心」に変わっているはずです。

家の足元のリスクを減らすための「3段調査法」のフローチャート図解。1段階目は**「机上調査」で、パソコンに向かう人のイラストと共に「ハザードマップ、地理院地図」を調べることを示している。2段階目は「現地チェック」で、虫眼鏡で家を見るイラストと共に「セルフチェック、目視確認」を行うことを示している。3段階目は「専門診断」**で、レーザー測量機のような専用機材のイラストと共に「専用機材、床下、小屋裏」の診断を行うことを示している。

【図解】住宅リスクの氷山モデル。見えているのは、わずか1割。

中古住宅に潜むリスクを理解するために、まずこの「氷山モデル」を頭に入れてください。

私たちが内覧で確認できる内装や外壁、設備の綺麗さといったものは、海の上に見えている氷山の一角に過ぎません。

⚠️本当に注意すべきなのは、海面下に隠れて見えない、巨大な氷の塊。すなわち、

「地盤・擁壁・基礎」です。住宅の資産価値や安全性を揺るがす致命的なリスクの9割は、この目に見えない部分に集中しているのです。

【実録写真あり】外から見ても異常なし。床下で基礎が真っ二つに折れていた築40年の家。

🏚️「見た目ではわからない」という事実を、最も象徴する事例をご紹介します。 これは、私が実際に診断した築40年の中古住宅です。

外から基礎の周りを目視で確認した限りでは、大きなひび割れもなく、特に異常は見受けられませんでした。 しかし、床下に潜って調査を進めると、私たちは言葉を失いました💔

床下の布基礎コンクリートに大きな垂直のひび割れが入り、上部がずれて段差ができているイラスト。これは、基礎に大きな力がかかり、せん断破壊を起こしている深刻な状態を示している。手前の土の上には配管が横たわり、木製の土台や梁も見える。

※写真をイラスト化して掲載しています。

📍写真の通り、床下の中央部で、家の重みを支えるはずの基礎が、長年の不同沈下によって完全に破断していたのです。 もし、この事実を知らずに購入していたら…考えるだけでも恐ろしい話です。これが、目に見えないリスクの本当の恐ろしさです。

依頼者は調査結果により、この物件の購入を見送りました。

あなたが買うのは「資産」ですか?それとも「爆弾」ですか?

家の足元に問題を抱えた物件を購入することは、資産ではなく、いつ爆発するかわからない「爆弾」を抱え込むことに他なりません。

  • 安全のリスク
    地震や近年多発するゲリラ豪雨の際に、家の傾きや擁壁の崩壊によって、ご家族が直接的な危険に晒されます。
  • 資産のリスク
    購入後に致命的な欠陥が発覚し、売るにも売れず、資産価値がゼロになる「負動産」と化します。補修費用が物件価格を上回ることも珍しくありません。
  • 健康のリスク
    基礎からの湿気や、それに伴うカビの発生が、ご家族のアレルギーや喘息といった健康被害を引き起こす可能性があります。

プロが実践する3段階調査法。「机上調査→現地チェック→専門診断」

では、具体的にどうやって調査を進めれば良いのでしょうか。プロが実践する3つのステップをご紹介します。

①机上調査編:PC一つで土地の“カルテ”を作る。

机上でできる調査として、ハザードマップと地理院地図を紹介する図解。左側はハザードマップの例で、新潟駅付近の浸水予想図が示されている。右側は地理院地図の例で、ドローンアイコンと共に1945年頃の新潟駅付近の白黒航空写真が示されている。

✅物件を内覧しに行く前に、まずはPCで誰でも確認できる情報から、その土地の“素性”を調べます。

  • ハザードマップ
    各自治体が必ず公開しています。「洪水」「土砂災害」「液状化」といった災害リスクを、住所を入力するだけで確認できます。
  • 国土地理院「地理院地図
    これがプロの調査のキモです。地理院地図サイトの「年代別写真」機能を使えば、購入予定地が50年前、60年前に何であったか(田んぼ、畑、沼地、山林など)を遡って確認できます。昔からずっと住宅地だった場所は地盤が安定している可能性が高い一方、田畑だった場所は、水分を多く含んだ軟弱地盤で、将来的に沈下するリスクをはらんでいる、といった予測が立てられます。

📍そもそも、なぜ場所によって地盤沈下のリスクが異なるのか、そのメカニズムについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

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②現地セルフチェック編:あなたの目で危険のサインを見抜く。

あなたの目線で危険を見抜く、地盤、擁壁、基礎のセルフチェックポイントを解説する図解。左のブロックは「地盤」で、床下の地盤が大きくひび割れているイラストと共に「床下の地盤がひび割れている」と書かれている。中央のブロックは「擁壁」で、コンクリートの擁壁が多数ひび割れている写真と共に「擁壁がひび割れている」と書かれている。右のブロックは「基礎」で、基礎に大きな白いひび割れ(エフロレッセンス/白華現象)がある写真と共に「基礎がひび割れている」と書かれている。

机上調査で得た情報を頭に入れ、いよいよ現地で危険のサインを探します。

  • 地盤
    物件そのものだけでなく、周辺の道路や隣家のブロック塀に、不自然なひび割れや傾きがないかを確認します。地域一帯が沈下しているサインの場合があります。
  • 擁壁
    斜面地や高台の物件では、擁壁のチェックが不可欠です。
    ・「ひび割れ」
    ・「はらみ(壁が膨らんでいる状態)」
    ・「水抜き穴が詰まっていないか」の3点を必ず確認してください。
  • 基礎
    「幅0.5mm以上の深いひび割れ」「基礎と土台の間に隙間がないか」などを確認します。

つい先日(2025年9月30)、東京・杉並区堀ノ内で、大雨によって住宅街の擁壁が崩壊するというニュースがあったばかりですこのように、近年のゲリラ豪雨では、想定を超える水圧が擁壁にかかり、ある日突然崩壊するリスクが高まっています。古い擁壁には最大限の注意が必要です。

Yahoo!ニュース
東京・杉並で倒壊の住宅は築57年だった…土を押さえる擁壁の亀裂が広がり崩れたか(日テレNEWS NNN) - Yaho... 東京・杉並区堀ノ内で、先月30日、一戸建ての住宅が突然崩れた事案について、杉並区は倒壊の原因を「宅地内の土の圧力により、擁壁(ようへき=高低差のある土地で側面の土...

✅ここで、ご自宅や購入予定の物件の基礎がどのタイプかご存知ですか?
基礎には大きく分けて「ベタ基礎」と「布基礎」の2種類があり、それぞれに特徴があります。

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✅また、基礎のひび割れは、その幅や場所によって危険度が全く異なります。単なる化粧モルタルのひび割れなのか、構造的な問題を示す危険なひび割れなのか、その見分け方をこちらの記事で詳しく解説しています。

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③専門診断編:購入すべきか、見送るべきかの最終判断を下す。

セルフチェックで異常が見られなくても、プロは専門的な機器を使って、さらに深掘りした調査を行います。
⚙️専用のレベル測定器によるミリ単位での家の傾斜測定や、鉄筋探査機によるコンクリート内部の鉄筋量の調査など、専門家でなければわからない最終的な購入の可否判断を下します。

🏚️中古住宅の購入は、こうした見えない部分のリスクを総合的に判断することが極めて重要です。

【診断実録】築7年、インスペクション済み物件で見抜いた構造欠陥。「大丈夫」は信用するな。

📍「築7年の築浅物件で、不動産会社のインスペクションも実施済みです。安心ですよ」 これは、あるお客様が、購入寸前まで進んでいた物件の話です。

しかし、私の床下調査により基礎と土台部分に構造的な不具合が見つかりました。
残念ながら、不動産会社のインスペクションは、全く当てにならない形式的なものでした。

床下の基礎と木製の土台を緊結する役割を持つアンカーボルトが切断されているイラスト。アンカーボルトの切断面が赤い円で囲まれ、その下に「基礎と土台をつなぐアンカーボルトが切断されている」という説明書きがある。

※写真をイラスト化して掲載しています。

この会社の「大丈夫です」という言葉に、何の根拠もありませんでした。
⛔️後日談ですが、買主は不動産会社が実施したインスペクションの報告書は見せてもらえず、「大丈夫です。」の一言だったそうです。

✅あなたが本当に信用するべきなのは、人の言葉ではなく、写真や測定結果といった、誰の目にも明らかな「客観的なデータ」だけです。

内覧時に使える!「地面と基礎のチェックリスト5」

✅さあ、これまでの知識を使って、ご自身の目でチェックしてみましょう。内覧時にスマホで見ながら使えるリストです。

  • 道路と敷地の境界ブロックに、大きなひび割れやズレはないか?
  • 擁壁がある場合、壁が膨らんでいないか?水抜き穴はあるか?倒れていないか?
  • 家の外周部の基礎にシャーペン芯一本分のひび割れはないか?
  • 押入れをあけて、カビや湿気の臭いがしないか?
  • 不動産会社に「建物状況調査」や「地盤調査書」の有無を聞いたか?

あなたの「気づき」は正しいですか?専門家の目で最終確認を。

⚠️このチェックリストで一つでも気になる点があれば、あなたの「気づき」は、非常に重要な危険信号かもしれません。

セルフチェックでリスクの芽を見つけることはできます。しかし、その芽がどれほど根深く、深刻な問題に繋がっているかまでを判断するのは、専門家でなければ不可能です。

数千万円の買い物で、一生の後悔をしないために。 あなたの判断が正しかったかどうか、その答え合わせを、私たち専門家の目でさせていただけませんか。それは、あなたの未来の安心のための、最も賢明な投資です☘️

<span class="cocoon-custom-text-1">関谷 春樹</span>
関谷 春樹

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「地盤・基礎の調査」のよくあるご質問(FAQ)

地盤・基礎の調査に関するFAQ(よくある質問)のイラスト画像。白い背景にピンクの枠があり、「FAQ よくある質問」という文字が書かれている。中心には一筆書きで描かれた家のイラストがあり、その下に6人の人物が様々なポーズで立っている。

Q. 地理院地図で、昔「田んぼ」だったことが分かりました。この土地はもう諦めるべきですか?

A. いいえ、すぐに諦める必要はありません。しかし、軟弱地盤である可能性が非常に高い「重要なリスク情報」として認識すべきです。大切なのは、その土地が過去に適切な地盤改良工事をされているか、そして、今建っている建物がその地盤に対して適切に設計されているか、です。この「昔、田んぼだった」という客観的な事実こそ、専門家による住宅診断を依頼する、強力な動機になります。

Q. 基礎に0.5mm以上のひび割れを見つけました。不動産会社には何と伝えればいいですか?

A. まずは慌てず、スマートフォンでそのひび割れの写真(幅がわかるように、シャーペン一本分などを並べて撮ると良い)を撮影してください。そして、不動産会社の担当者に冷静に「基礎に気になるひび割れがあったため、契約を進める前に、一度こちらの費用負担で専門家による住宅診断を実施させていただきたい」と伝えましょう。誠実な担当者であれば、売主様との調整に協力してくれるはずです。

Q. 目の前の擁壁が、2m以上と高く倒れてこないか心配です。

A. 高さ2mを超える擁壁は、法律(建築基準法)で確認申請が義務付けられている重要な構造物です。ご心配されるのは、非常に正しい視点です。まずは、ご自身でできる以下の初期チェックを行ってみてください。
・著しいひび割れがないか
・壁にはらみはないか
・水抜き穴はあるか
・パッと見て傾いていないか

擁壁の安全性は専門家による詳細な調査が必要です。上記の初期チェックで不安要素があればご相談ください。

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この記事を書いた人

関谷 春樹(せきや はるき)
15年の大工・棟梁経験を活かし、現在はホームインスペクター(住宅診断士)として年間100棟の住宅を診断。その傍ら、建築専門学校で未来の建築士たちに「構造力学」や「環境工学」を教える講師も務める。
コンセプトは「見えない不安を、見える安心に」。 高価な設備やスペック競争よりも、現場での「適切な施工」と「本質的な知識」こそが、家の価値と家族の健康を守ると信じ、情報発信を行っている。
【主な保有資格】
・二級建築士
・JSHI公認ホームインスペクター
・一級建築大工技能士
・カビ・ダニ測定士
・シックハウス診断士

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