- 中古住宅を買いたいけど傾いていないか不安だな
- 最近体調が悪いんだよな。もしかして家が傾いているせいかな?
- 築5年だけどなんとなく家が傾いているかもしれない…
家の傾きは気が付かないうちに進行して建物だけでなく健康被害まで及ぼす可能性があります。
この記事では家が傾く原因と法律で決めれた許容範囲をイラストで簡単に解説しています。
専門家に依頼する前に自分でできる調査方法も解説しました。
私は15年間住宅に関わり続け、現在は年間100棟の住宅診断(ホームインスペクション)を行っています。
これまで多くの傾いた家を調査してきました。知識だけでなく経験も含めてこの記事に凝縮しています。
家の傾きに悩んでいる人はぜひ最後まで読んでください。
※この記事では難しい用語をできるだけ使わずに一般の方でも概要がわかるように解説しています。
専門的には多少の解釈の違いがありますのでご了承ください。
家の傾きには種類がある
地盤沈下が原因
家の傾きで最も被害が大きくなるのは地盤沈下です。
- 擁壁の上に建っている土地
- 切土・盛土などで造成されている土地
- 宅地になって年数が浅い土地
地盤沈下で家が傾く原因は下記の記事で詳しく解説しましたのでご覧ください。
基礎の施工不良が原因

基礎の上端高さが水平でないと家が傾きます。
この原因は単純に施工不良です。
基礎が沈下しているのか、上端高さが水平でないまま造られたのかは簡単には判断できません。
原因がわからないと修繕するにしても工法が決まらないため原因の追究は重要です。
1階床の高さ調整が不足している

画像引用;城東テクノ 改良床工法 束シリーズ
最近の新築では鋼製束や樹脂製束を使用します。
新築時に束(つか)の高さ調整がされていないと1階の床に傾きが生じます。
束の調整不足はネジ調整で対応可能なため構造的な問題ではない可能性もあります。

築30年以前は木材の束が使用されています。
地盤面が土の場合、地盤面の締付け不足などで束石が沈下している可能性があります。
束石の沈下は地盤とも関連しているため高さ調整だけでは根本的な解決にはなりません。
2階の床の傾きは”たわみ”が原因

”たわみ”とは梁に荷重が掛かることで梁が弓なりにしなることです。
たわみの原因は間取りの設計不良と梁の断面寸法不足が考えられます。
1階は水平なのに2階の床に傾きを感じる場合は2階の梁の”たわみ”が原因です。
1階のLDKが大きくその上に小さい洋室がいくつもある場合は”たわみ”が生じやすい間取りといえます。
梁の断面寸法不足は家の重さに耐えきれず梁がしなっている状態です。
大規模な改修を行えばたわみの進行を抑えることができます。
床材の劣化や腐食が原因

床が傾いていると勘違いされやすいのが床板の劣化や腐食です。
劣化や腐食は家が傾いているわけではなくフローリングや畳が湿気やシロアリなどにより下がっている状態です。
床の劣化や腐食のほとんどが床下空間の湿気が多いことが原因です。
- 地盤面から湿気が上がってくる
- 床下空間の換気が不足している
- タイル風呂から漏水している
- 床下の湿気が多いのでシロアリがやってくる
床下の不具合事例はシロアリ発生の原因にもなります。
- 地盤面に防湿シートを張る
- 床下換気口から換気を確保する
- 水まわりの漏水を止める
これらの対策をしないとシロアリの薬剤を撒いても数年後には再度シロアリが発生します。
床下の湿気を減らして換気を確保することが一番重要な対策です。
家の傾きの許容範囲は品確法で決められている
床の傾きの許容範囲

床の傾きの許容範囲は
・新築で3/1000未満
・中古住宅で6/1000未満と決められています。
床の傾きは3m以上離れた点を測ることが基準です。
床は細かく波打っているため60㎝程度の短い水平器で3/1000を超えていても家全体が傾いているとはいえません。
壁または柱の傾きの許容範囲

壁または柱の傾きの許容範囲は
・新築で3/1000未満
・中古住宅で6/1000未満と決められています。
壁または柱の傾きは2m以上離れた点を測ることが基準です。
床と同様で短い水平器で測っても家全体が傾いているとはいえません。
家の傾きは”品確法 住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準”に定められている
これまで解説してきた傾きの許容範囲は品確法に基づき国交省告示の住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準に定められています。
参考資料;住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準 国土交通省
家の傾きの許容範囲は新築、中古住宅を購入する際に制度を利用する基準になっています。
新築について
新築から10年以内に3/1000以上の傾きが生じた場合に保険が適用される制度。
引用;住宅瑕疵担保責任保険について 国土交通省
中古住宅について
中古住宅を購入する際に専門の建築士が検査することで安心した住宅購入ができる制度。
6/1000以上の傾きがある場合は保険に加入できない。
引用;既存住宅売買瑕疵保険について 国土交通省
フラット35
中古住宅を購入する際の住宅ローン制度。
6/1000以上の傾きがある場合はフラット35は利用できない。
引用;【フラット35】中古住宅の物件検査 住宅金融支援機構
床に6/1000以上の傾きがあると歩くだけで気がつく

建築業者が気が付く床の傾きは6/1000以上
住宅診断士や建築士など建築に関わる仕事をしている方は一般の方に比べて平衡感覚に優れています。
私も含め複数の建築関係者で傾いた家に入ったところ6/1000程度の傾きがあると歩くだけで傾きを感じられました。
一般の方が気が付く床の傾きは10/1000以上
傾いた家を調査した際に傾斜測定結果を伝えずに一般の依頼者に聞いたところ10/1000以上だと歩くだけで傾きを感じられると言います。
そのため一般の方が傾きを感じることができる傾斜角度は許容範囲を大きく超えている可能性が高いです。
少しでも異変を感じたら専門家による調査をお勧めします。
新築の許容範囲である床の傾き3/1000では気が付かない
私は新築の住宅診断も行います。
年間100棟の住宅診断を行っていても3/1000の傾きを歩くだけ感じることはできません。
そのため新築であっても実は許容範囲を超えていることがあります。
新築でも引渡し前に傾きを測定して確認することは必須です。
家が傾いていると構造的に不安定になる
6/1000以上の傾きは構造的に不安定になる

柱が傾くと家の重さを垂直に伝えることができません。
そのため地震などの外力が掛かった際に倒壊する可能性が高くなります。
3/1000未満でも構造的に不安定になる場合

新築時で擁壁と家全体が同じ方向に傾いていると傾きが進行する可能性があります。
その原因は2つあります。
・積載荷重が無い状態で傾いている
・圧密沈下が収束していない
「積載荷重」とは人や家具などの移動できる荷重のことです。
積載荷重がない状況で傾いていると引越し後に傾きが進行する可能性があります。
「圧密沈下」とは年数をかけて地盤が締め固められることです。
擁壁などで造成した土地の場合、圧密沈下は最初の1~2年で大きく進行しその後はゆっくりと進む傾向があります。
これらの原因があるため新築で3/1000未満の傾きでも同じ方向に傾いている場合は注意が必要です。
家の傾きを自分で調べる方法
- ドアの開閉がスムーズにできるか
- ビー玉が転がるか
- 五円玉をぶら下げる
- 水平器で測る
家の傾きを自分で調べることはあくまでも参考としてください。
基本的には一般の方が家の傾きを測り原因を判断することはできません。
異変を感じたら専門家による調査を依頼しましょう。
ドアの開閉がスムーズにできるか

室内のドアや窓などの開閉に異常がないか確認してください。

この方法は効果的で私も調査時に実施しています。
・ドアと枠のすき間が斜めになっていないか
・ドアが床に擦っていないか
・ドアと柱が干渉していないか
ドアや窓は本来真っ直ぐに造られます。
すき間や干渉があるのはどこかが傾いている証拠です。
五円玉をぶら下げる

- ドアの枠などに糸を付けた五円玉をぶら下げます。
- 糸の上と下の壁からの距離を測ります。
- 上と下の距離に誤差をドアの高さ(2m)で割ります。
誤差が6mmだった場合
誤差6mm÷ドアの高さ2000mm=傾き3/1000となります。
壁の傾きが3/1000以上なので新築であれば許容範囲を超えていることになります。
ビー玉が転がるか

ビー玉が転がるからといって家全体が傾いているとはいえません。
しかし一つの検討材料にはなります。
ビー玉を部屋のどこへ置いても同じ方向に転がると家が傾いている可能性があります。
水平器を置く

先ほど短い水平器では家の傾きを測れないと解説しました。
しかし検討材料にはなります。
- 部屋の角の壁・床
- サッシのレール
- 擁壁
部屋の中心などは多少のゆがみがあるため家の外側を測定しましょう。
ホームインスペクション(住宅診断)の費用の相場は5〜10万円
ホームインスペクション(住宅診断)の費用
費用の相場は5~10万円です。
ホームインスペクション(住宅診断)で重要なのは傾斜を測定することではなく
”何が原因で傾いているのか?”を判断できる能力があるかです。
ホームインスペクション業者は専用の機械で計測します。
そのため機械を使えば誰でも傾斜測定はできます。
傾斜測定により建物にどんな特徴があり、傾きの原因を推測できるかは住宅診断士の能力次第です。
会社の大小ではなく個々の能力が住宅診断には重要です。
プロの住宅診断士による家の測定方法

ここでは私が実施している家の計測方法をご紹介します。
結論として家の傾きの原因を調べるには家をまるごと調査する必要があります。
なぜなら家の傾きは複合的な要素があり原因は一つではないからです。
そのためできるだけ多くの情報を集めることで家が傾いている原因を推測する必要があります。
- 擁壁
- 外壁下端
- 1,2階の床
- 1,2階の壁・柱
床や壁の傾きだけ測定しても家の傾きの原因を知ることはできません。
擁壁の傾斜や外壁の傾斜なども測ります。
まずは本来、水平垂直に造られている箇所の傾きを知る必要があります。
傾きが同一方向にあれば不同沈下を疑います。
- 擁壁
- 土間コンクリート
- 外側の基礎
- 床下の基礎
- 外壁
- 室内の壁
ひび割れは家の傾きに密接に関わっています。
特に床下の状態は家の傾きの原因を知るヒントが多くあります。
そのため調査時には必ず床下に進入します。
傾斜測定だけでは家の傾きの原因を知ることはできません。
家が傾いていると健康被害が起きる

家が傾いているとめまいや頭痛などの健康被害が生じる方がいます。
個人差はありますが6/1000以上の傾きがあると健康被害が生じると言われています。
日本建築学会
家の傾きによる健康被害について私の推測です。
坂道を歩いている時に体調が悪くなる人はいないと思います。
それは坂道は傾いていると認識できるからです。
本来、水平な部屋は傾いているとは思いません。
傾きを認識していないで生活していることが体調不良の原因と思います。
そのため少しでも異変を感じたらまずは傾いていることを認識するためにも傾斜測定の依頼をお勧めします。
今からできる傾きの予防対策
- 早めに相談して傾いていることを認識する
- 契約内容を確認する
- ベットを水平に調整する
- ”たわみ”の進行を止めるために家具の配置を変える
傾きを感じたら早めに相談する
早めに相談する理由としてはまず傾いていることを認識するためです。
先に解説した通り傾いていることを知らないまま生活すると健康被害が起きる可能性が高まります。
”住まいと家族の健康学校”では
【無料の相談メール】を受け付けています。

家の傾きについて不安に感じていることや中古住宅の購入で悩んでいる方はご相談ください。
契約不適合責任や瑕疵保険の適用の確認をする
”契約不適合責任”とは建物が契約していた内容と違っていた時に売主が負う責任のことです。
要するに「傾いている家なんて買ってない!」ということです。
この責任を追及できる期間が原則として不適格を知ったときから1年以内とされています。
”瑕疵保険(かしほけん)”とは一般的に新築を引き渡してから10年以内で瑕疵(傾きや雨漏り)が見つかれば売主の責任で修繕してもらえるという保険です。
不具合を起こした場合には売主に伝える期限があるのです。
これらの契約内容は様々なため異変を感じたら早めに相談してください。
ベットを水平に調整する

傾いている床にベットを置くと寝ている時に血流が悪くなります。
異変を感じたら最低限ベットだけでも水平になるように高さ調整をしましょう。
”たわみ”の進行を止めるために家具の配置を変える

2階のみに傾きを感じる場合は”たわみ”の可能性があります。
たわみは建物の重さを梁が支えきれず弓なりにしなることです。
そのため傾きを感じている箇所に極端に重いものを置かないように家具の配置を変えましょう。
”たわみ”は数十年かけて少しずつ傾く現象のため知らないうちに床が傾いている典型的なパターンです。
傾斜を感じたら早めに相談しよう
- 傾きを感じていると許容範囲を超えている可能性が高い
- 傾きを感じたら契約内容を確認しよう
- 自分で傾きを調べてみよう
- 心配ならプロの住宅診断士に相談しよう
家の傾きの原因は複合的であり傾斜測定をしただけではわかりません。
まずはご自身で家に異変がないか注意深く観察してみてください。
それでも不安な場合は地盤沈下や家の傾きに詳しいホームインスペクターに依頼することをお勧めします。
家の傾きを放っておくと建物も健康も被害が大きくなります。
対策としてはまず現状を知ることが大切です。
”住まいと家族の健康学校”では
【無料の相談メール】を受け付けています。
家の傾きについて不安に感じていることや専門的でわからない方はぜひご相談ください。