「カビを除去します」
床下や壁の中にカビが見つかって、ハウスメーカーに伝えた。
非を認めている。対応もしてくれる。
清掃してもらえれば、目に見えてきれいになる。一見、解決したように見えます。
でも、なんだか腑に落ちない。
なぜ新築の建物に、カビが生えたのか。
除去すれば、もう生えてこないのか。同じ原因が、別の場所でも進行していないのか。
納得できないのは、あなたが間違っているからではありません。
その問いに、何も答えてもらっていないからです。
カビは表面に現れた結果にすぎません。
関谷建築事務所の調査は、目に見えるカビではなく、そこに至った原因そのものを究明することを基本としています。
この記事では、当事務所がカビ調査においてどのような視点で原因を読み解いているのか、その考え方をお伝えします。
「カビ除去します」は、原因解決ではない

ハウスメーカーの対応が、間違っているわけではありません。
カビが発生している事実を認め、カビ除去という対応を取る。それ自体は、誠実な対応です。
でも、その対応が答えているのは、今この時点で目に見えているカビを除去する、という事実だけです。
なぜカビが生えたのか。この先、また生えてこないのか。
あなたが知りたいことには、何も答えていません。
カビは、発生した原因によって意味がまったく違います。
生活環境に起因するものであれば、換気や除湿といった対策で再発を抑えられる可能性があります。一方、建物の設計や施工に起因するものであれば、防カビ材の有効期限が切れれば再発します。
本当に重要なのは「カビを除去すること」ではなく、「なぜそのカビが発生したのか」です。
「生活環境のせい」では説明できないカビがある
カビの原因として、施工者からよく挙げられる説明があります。
「換気が足りない」「湿度が高い」「エアコンで結露している」
どれも間違いではありません。生活環境に起因するカビは、実際に存在します。
しかし、新築間もない住宅で床下や壁の中にカビが発生している場合、生活環境だけでは説明できない原因が潜んでいることがあります。
新築時のコンクリートが持つ水分

基礎コンクリートに含まれる水分が完全に蒸発するには、一般的に数年を要します。
基礎断熱工法において、この水分をどう逃がすかという設計上の検討が不十分なまま引き渡された場合、床下のカビは生活環境とは無関係に発生します。
断熱の欠損が引き起こすカビ
断熱材に欠損や施工不良があると、冬は壁の表面に結露が生じ、夏は壁の内部で結露が起きる「夏型結露」につながることがあります。
いずれも、換気や清掃では防ぐことができません。
対症療法には有効期限がある
・防カビ材でカビを防ぐ
・シーリングで雨漏りを防ぐ
・防蟻剤でシロアリを防ぐ
・除湿剤で結露を防ぐ
これらにはすべて有効期限があります。
「防カビをしたから問題ない」という説明は、その時点での対処にすぎません。
根本的な原因が残っていれば、効果が切れた後に同じ問題が戻ってきます。
表面に現れたカビだけを見ていても、原因には近づけません。建物全体に起きていることを、順番に整理していく必要があります。
カビ除去では取り除けないリスクがある
カビを清掃しても、根本的な原因が残っていれば、問題はカビだけにとどまりません。
湿気が多い環境は、腐朽菌が繁殖しやすい環境でもあります。腐朽菌は木材の強度を低下させ、シロアリを呼び寄せる条件にもなります。
木材の含水率が上昇すれば、構造材の耐力が落ちます。換気が機能していなければ、室内の空気環境も悪化します。
カビはその入口にすぎません。
表面を清掃すれば、カビは一時的に消えます。でも原因が残っていれば、再発します。そのあいだに、気づかないうちに腐朽やシロアリの被害が進んでいることもあります。
この連鎖は、表面からは見えません。
カビが生えている箇所だけを見ても、原因には近づけない

カビの発生箇所はどこか。範囲はどのくらいか。
確認すべきことは、カビ単体だけでも一つではありません。
さらに、カビは独立して起きる現象とは限りません。雨漏り、結露、断熱欠損、換気計画の不備。建物全体に起きていることの一部として現れている可能性があります。
カビが生えている箇所だけを見ていても、原因には近づけない。
建物全体を一つの「面」として立体的に捉えることが、原因を見極めるための出発点です。
一度の調査では終わらない理由
もう一つ、欠かせない視点があります。
それは「時間軸」です。
一度の調査でわかるのは、その時点での状態だけです。
そのカビが引き渡し直後から発生していたのか、築3年、築5年を経て現れたのか、一度除去されたものが再発しているのか。
それによって、考えられる原因は大きく変わります。
こうした場合、まず目に見えるカビを除去した上で、一定期間の経過を観察し、その結果から逆算して原因を推論するアプローチが有効です。
再発しなければ、新築当時の水分蒸発や生活環境に起因する一時的なものだった可能性が高い。
一方、同じ場所や別の場所に再びカビが生じた場合は、建物の構造や設計に起因する原因が、今も継続して作用していると考えます。
何ヶ月観察すればよいかは、住宅の築年数や状態によって異なります。一律には決められず、現地調査の結果に応じて判断します。
当事務所が行うのは「除去」でも「点検」でもなく「原因究明」

正直にお伝えします。
当事務所にできないことがあります。これは能力の話ではありません。責任の話です。
カビの除去や防カビ施工を決定し、実施できるのは、その建物を設計し、施工し、契約上の責任を負っている施工者だけです。
第三者がその領域に踏み込むことは、「自分で責任が取れない判断」をするということです。
だから当事務所は、除去も防カビ施工も是正設計も行いません。
なお、施工会社との交渉や話し合いの代理・代行は、弁護士法上、当事務所が行うことのできない業務でもあります。
当事務所が担うのは、主に二つです。
1. 「なぜそのカビが発生したのか」を、建築物理に基づいて究明すること。
2. 施工者から提示される是正案が、確認された原因に対して妥当かどうかを検証すること。
この二つが揃って初めて、あなたはハウスメーカーや工務店の対応に納得して進むことができます。
住宅の状態を項目ごとにチェックするホームインスペクション(住宅診断)は、現状を把握するうえで有効な手段です。しかし当事務所が行う調査は、それとは目的が異なります。
すでに起きている現象に対して、事実を確認し、仮説を立て、検証し、因果関係を整理していく。それが当事務所の専門業務です。
カビ調査で確認する、3つの視点

1. 図面・資料の精査
現地調査の前に、設計図書・断熱仕様・換気計画・施工記録・工事写真などを精査します。
実際に建てられた建物が、設計上の断熱や換気の計画と一致しているかを確認するためです。
設計と現況のあいだに差異があれば、それ自体がカビの背景にある可能性があります。現地で何を見るべきかは、図面を読んで初めて見えてきます。
2. カビだけではない、建物全体の調査
現地では、カビの発生箇所・範囲・状態を確認します。断熱材の状態、壁内や床下の湿潤環境、換気経路の実態も調査します。
それだけではありません。
外壁の雨水浸入の痕跡、結露の発生状況、構造材の腐朽の有無も確認します。
カビが独立して起きている現象なのか、建物全体に起きていることの一部として現れているのか。その判断に必要な材料を、建物全体から集めます。
3. 是正案の妥当性検証
施工者からカビの除去や防カビ施工、断熱材の交換といった是正案が提示されている場合、その方法が確認された原因に対して適切かどうかを技術的に検証します。
「この原因に対して、この是正方法で対応した場合、今後どのような経過が想定されるか」
その問いに答えることが、検証の目的です。
是正工事中の現場確認と、その後の経過観察も業務に含まれます。
原因がわかり、適切な是正が行われ、その後の変化を確認する。この一連があって初めて、納得のある解決につながります。
カビ調査報告書の内容
調査結果は、報告書として提出します。
報告書に書かれているのは、「この箇所にカビがあった」という結論だけではありません。
「なぜそう判断できるのか」という推論の過程そのものが、報告書の中核です。
カビの発生状況、図面との照合結果、断熱や換気計画との整合性、他の不具合との関連性。それらの事実から、どのような因果関係が導かれるのかを、建築物理に基づいて記載します。
是正案が提示されている場合は、その方法が特定された原因に対して妥当かどうかについての技術的な見解も記載します。
根拠のなかった話し合いが、事実に基づいた協議に変わる。
報告書は当事者同士の共通土台として機能します。
この調査で、あなたが得られるもの
当事務所の調査が、すべてを解決するわけではありません。
施工者が動くかどうかは、当事務所にはわかりません。完全な解決を保証することもできません。
それでも、一つだけ言えることがあります。
今のあなたには、施工者の説明を信じるか、疑うかしか選択肢がありません。
調査が終われば、事実として判断できる状態になります。
わからないまま受け入れるより、根拠を持って判断できる方が、前に進めます。
カビ調査をご検討の方へ

当事務所の調査は、図面・資料の精査、現地での事実確認、是正方法の検証、必要に応じた経過観察までを一連の業務として行います。
このような状況の方からご依頼をいただいています。
- カビ除去で対応すると言われたが、また同じ場所にカビが生えてこないか不安がある
- なぜカビが発生したのか、原因をきちんと知りたい
- 断熱材や構造材への影響が心配だが、施工者から明確な説明がない
- 是正案が提示されているが、その方法で本当に解決するのか確認したい
- 事実に基づいて、施工者と今後の対応を話し合いたい
お問い合わせから是正工事までの具体的な流れ
これまでの経緯、施工者とのやりとり、現在の状況をお聞きします。当事務所として対応できる内容かどうかを確認します。
設計図書、施工記録、工事写真などを精査します。提供資料からカビ発生の仮説を立て、現地調査の準備を行います。
カビ発生箇所だけでなく、建物全体の状態から原因を読み解きます。
報告書には結論だけでなく、なぜそう判断できるのか、推論の過程そのものを記載します。その根拠があって初めて、施工者の説明が正しいかどうかを技術的に検証できます。
施工者から補修案が提示された場合、その方法が原因に対して妥当かどうかを技術的に判断します。補修工事中の現場確認と、その後の経過観察も業務に含まれます。
施工者と話が噛み合わない理由を知りたい方へ
「清掃します」という説明に納得できない状況が、なぜ生まれるのか。施工者との対話が噛み合わない構造そのものは、以下の記事で説明しています。
新築の施工ミスを認めてもらえない。ハウスメーカーの対応に納得がいかない方へ
ご相談・お見積り窓口
建築の知識は必要ありません。
「なんとなく納得できない」という状況にある方であれば、それで十分です。
現在の不具合の写真や、施工者からの説明資料があれば、合わせてお送りください。
なお、初回相談に費用はかかりません。







