悪くなっている気がする——その不安は、気のせいではありません

「すき間が、広がってきた気がする」

「なんだか、傾いてきた気がする」

新築の不具合と向き合っている方から、私はこの「気がする」を何度も聞いてきました。

実際に、多くの人がそう感じています。気のせいだと片付けられる話ではありません。

ただ、その感覚がどこから来ているのかを整理すると、少しだけ、消耗の止め方が見えてきます。

「気がする」には、比べるものがない

すき間が広がった。傾いてきた。そう感じたとき、何と比べているでしょうか。

多くの方が、その場所の写真を撮っています。気づいたときから、何枚も。

ただ、写真は「その日の見た目」を残せても、「何ミリ広がったか」までは教えてくれません。

数値になっていないため以前の写真と今を並べて、広がったと確認できた方は、ほとんどいません。

比べる基準がないまま、毎日その場所を見に行く。見るほどに、記憶は上書きされていきます。

だから「気がする」は、「気がする」のまま止まります。観察が足りないからではなく、比べるものが、そもそも手元にないからです。

きっかけは、不具合ではないかもしれない

ここに、もう一つの理由が重なります。

まず不具合が起きた。
→施工者が対応した。
→その説明に、納得できなかった。

そして、そこから「悪くなっている気がする」が始まっています。

つまり「気がする」のきっかけは、不具合そのものではなく、その後の対応への不信感かもしれません。

不具合が起きたことまでは、受け入れられた。人がつくるものだから。

けれど、その後の説明に納得できなかった。信じていいのか分からない相手が「大丈夫です」と言う。

その状態で、進行していると感じても、無理はありません。

これは、神経質だという話ではありません。そう感じて当然の状況に、置かれているということです。

「気のせい」でも「悪化」でもない、第三の答え

こうした「気がする」は、実際に測れば、進行していないことが多いものです。

ただ、大事なのはここからです。

「進行していない」という結果は、「気のせいだった」という意味ではありません。

あなたが感じていた違和感は、間違っていない。ただ、不安が向いていた先が、少しずれていただけです。

悪化は起きていない。けれど、最初にその症状が出た原因は、まだそこに残っています。

悪くなっているかどうかと、最初の不具合があるかどうかは、別の話です。

輪郭のない不安が、一番、人を消耗させます。

悪くなっているかもしれない、でも確かめる方法がない。その気持ちが不安を増幅させています。

必要なのは「気にしすぎですよ」という言葉ではありません。

今どうなっているかを確かめ、最初の不具合がどこにあるのかを知ること。それが分かれば、この消耗には、終わりが来ます。

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責めたいわけではないけれど、納得もできていない。その気持ちそのものについては、こちらで書いています。

施工者の説明に根拠があるかを見分ける視点は、こちらで整理しています。

症状別の原因と調査の考え方は、該当する記事をお読みください。

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執筆者

関谷建築事務所 代表
築10年未満の住宅不具合の「原因究明」を専門とする建築士事務所を運営。
大工棟梁13年、ホームインスペクション250件超を経て、現在は調査専門。専門学校の講師として建築教育にも携わっています。
争うための調査ではなく、争わずに済むための調査を提供。
事実と推論を分けて示し、依頼者が自分で判断するための土台を提示します。