「様子を見ましょう」— 正当な経過観察との違いは、理由の説明があるか

新築の不具合を指摘したとき、施工者から「しばらく様子を見ましょう」と言われたことはありませんか。

言われた側としては、どうすればいいのか分からないまま時間が過ぎていきます。そして「対応を後回しにされているのではないか」という不信感だけが残っていきます。

経過観察という選択自体は、間違いではありません。

私自身、調査の結論として「一定期間、経過を追う」という判断を出すことがあります。今の時点では確定できない、けれど時間が判断材料をつくる。そういう不具合が実際にあるからです。

問題は「様子を見る」という言葉そのものではなく、その言葉の裏にある理由が説明されているかどうかです。

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正当な経過観察には、理由と条件がある

本当に必要な経過観察であれば、理由と条件がセットで説明されます。

たとえば、基礎のひび割れであれば、こうなります。

「このひび割れは乾燥収縮によるものと考えられます。今の幅は0.2mmです。半年後に同じ場所を再測定します。それまでに目に見えて広がる、あるいは周囲に新しいひび割れが出た場合は、その時点で連絡をください」

なぜ今は補修ではないのか。何を見るのか。いつまで見るのか。この三つが入っています。

そして、今の幅が数値として残っている。これが決定的です。基準がなければ、半年後に見ても広がったかどうかを判断できません。

ここまで示されていれば、依頼者は待つ人ではなく、見る人になります。

待つことと、放置されることは違います。

説明のない「様子見」は、判断の保留

一方、納得できない「様子を見ましょう」には、理由も期限も基準もありません。

理由が説明されない経過観察は、建築士としての判断を保留している状態です。原因が特定できていない段階では、そう言うほかない場合もあります。

ただ、それが依頼者に伝わっていなければ、待つ理由は分かりません。

判断が保留されたままでは、いつまで待てばいいのか分からず、日々変化のない場所を確認しては消耗することになります。

そもそも、様子を見てよい不具合とは限らない

もう一つ、押さえておきたい区別があります。理由が説明されていても、様子見が妥当ではない症状があります。

経過観察が先に必要なもの

基礎のひび割れ、家の傾き、梁のたわみ。

これらはある一日の調査だけでは、進行しているかどうかを判定できません。経過観察という時間が判断材料をつくります。

補修が先で、経過観察はそのあとに行うもの

雨漏り、結露、カビ。
これらは待っている間に被害が広がります。

水が入り続ければ木部は腐朽しますし、結露・カビは増殖して家全体に胞子が拡大します。

この三つで「様子を見ましょう」と言われた場合は、なぜ先に止めないのかを確認する必要があります。

症状によって、「様子を見る」という判断の妥当性そのものが変わります。

なぜ、一度の調査では判断できないのか

では、経過観察が必要な不具合では、なぜ時間が要るのか。基礎のひび割れで説明します。

基礎のひび割れは、新築直後にもっとも多い不具合の一つです。多くは乾燥収縮によるもので、適切に補修すれば大きな問題にはなりません。ひび割れ幅については、判断のめやすとなる基準も示されています。

ただし、その数値は調査したその日の状態を切り取ったものです。同じ幅のひび割れでも、そこで止まっているものと、広がり続けているものでは意味がまったく違います。一度測っただけでは、どちらなのか分かりません。

そして、幅のほかに見るべき点があります。

  • 補修した上から、再びひび割れが生じていないか
  • 基礎の内側と外側で貫通していないか
  • アンカーボルトと同じ位置に出ていないか
  • 立上りと地盤面がつながっていないか
  • 他の不具合との関連性はないか

ひび割れという一つの症状だけを切り取っても、問題の有無は判断できません。

建物全体の中で、その位置に出ていることの意味を読む必要があります。そのために時間が要る。これが「経過観察が必要な理由」です。

ここまで説明されていれば、待つことに納得できるはずです。逆に言えば、この説明がないまま「様子を見ましょう」とだけ言われたのなら、引っかかって当然です。

「様子見」と言われたら確認すること

納得、判断基準、安心。この順番でしか進みません。

安心から始めることはできません。まず理由に納得し、次に自分の判断基準を持つ。安心は、その結果として後からついてきます。

そのために確認することは、多くありません。

  1. 何を判断するために、様子を見るのか
  2. いつまで経過観察を続けるのか
  3. 今の状態はどの数値で、何が起きたら連絡すればいいのか

これらに明確な回答が返ってくるかどうかが、その経過観察に根拠があるかを見極める基準になります。

必要なのは、曖昧な言葉による安心ではなく、事実に基づいた理由です。

理由がはっきりして初めて、無駄な消耗から抜け出すことができます。

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責めたいわけではないけれど、納得もできていない。その気持ちそのものについては、こちらで書いています。

施工者の説明に根拠があるかを見分ける視点は、こちらで整理しています。

何となく状態が悪くなっている気がする理由は、こちらで書いています。

症状別の原因と調査の考え方は、該当する記事をお読みください。

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執筆者

関谷建築事務所 代表
築10年未満の住宅不具合の「原因究明」を専門とする建築士事務所を運営。
大工棟梁13年、ホームインスペクション250件超を経て、現在は調査専門。専門学校の講師として建築教育にも携わっています。
争うための調査ではなく、争わずに済むための調査を提供。
事実と推論を分けて示し、依頼者が自分で判断するための土台を提示します。

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